■性依存症とは何か


1)性依存症とは何か

性依存症(Sexual Addiction、Sex Addiction)とは、
性的行動(Secual=性的)における依存症(Addiction=依存症)です。

性依存症の依存行動は、下記のように
セックスを含めた全ての性的行動をさします。

・特定のパートナーとのセックス
・不特定多数とのセックス
・自慰、マスターベション
・ポルノを見ること、収集すること
・ポルノを作ること、書くこと、描くこと
・ポルノの被写体になること
・ネットや電話を使った性的な会話やチャット(サイバーセックス)
・出会い系サイトの利用
・性的妄想をすること
・SM行為など、フェティシズム的な性行為
・買春や売春
・風俗店で働くこと、風俗店を利用すること
・強姦、暴力的・脅迫的なセックス
・覗きや盗撮、痴漢、ストーキング、その他の性犯罪行為
・性的嫌がらせ(セクシャルハラスメント)行為
・性愛対象へのつきまとい(ストーカー)行為
・子供や知的障害のある相手への性虐待、性的そそのかし

上記にあげた性行動のすべてが
そのまま「性依存症の依存行動」だということではありません。
犯罪的な行為は別としても、パートナーと抱き合うことや
自慰をすることそのものに、何か問題があるわけではありません。
性的な行動や衝動は、本来は人間の本能や豊かな生き方に根ざしたものです。
ここで問題にされるのは、性行動そのものではなく
その行動に依存しているかどうかです。

ある人が上記の性行動をとるとき強迫的な衝動に突き動かされ、
他のことを犠牲にしてでも何度も繰り返さないではいられないとすれば、
それは「性依存症」である可能性が高いと言えます。
例えば、風俗店通いがやめられずに性病になり、お金を浪費し、家族を失うといったようなことです。
本人や周囲の人間の健康や生活、人間関係を損ねるような
病的に強い性衝動、セックスの濫用を「性依存症」と呼びます
深刻な状態にある依存症者は、しばしばコントロールを完全に失っています。

ちなみに、性依存の問題において
同性愛か異性愛か、男性か女性かは関係がないと思われます。
同性愛者でも異性愛者でも、同性と異性の両方が恋愛の対象になる人でも
同じように性依存症で苦しむ可能性があります。
セクシュアリティだけでなく、性別や民族、国籍、社会的階級、学歴などが違っていても
全ての人間が性依存に陥る可能性を持っています。
実際に、学歴が高く一流の会社に勤めていて、容姿もよく恋人にも恵まれているような人が
性依存症であるということもあります。



2)性依存への誤解と偏見

セックスに関する話題は特に日本だとタブー視されがちで
あまり多く語られてきませんでした。
人権の問題に絡んで「個人の自由」が重んじられる中で、
セックスに関しても個人の趣味・嗜好が(ある程度)認められ、
心の病という視点からは研究が遅れていたのは事実だと思います。

依存症の難しいところは、しばしば周囲に
「本人が好きでやっている」と勘違いされてしまうことです。
アルコール依存の問題にしても、研究が進む以前は
ただの「酒好き」「呑み助」だと思われてきました。
同じように性依存は「性欲の強い人間」「淫乱な人」と誤解されがちです。
性依存症、セックス依存症は一般に認知度が低いので
依存症者本人も「自分は淫乱な人間だ」
「自分は性欲が強いからやっているのだ」と、自分を誤解してしまいます。

しかし依存症は、表面上はともかく、心の奥底を見てみると
決して本人たちが好きでやっていることではありません。
アルコール依存の場合も、本人たちはお酒が好きで好きで飲んでいるわけでも、
美味しくてたまらないわけでもありません。
本人が「もうやめたい」「減らしたい」と思っていても
本人の意思だけできっぱりやめることは非常に難しくもあります。
アルコール以外の、例えばニコチン(タバコ)依存やギャンブル依存、
ネット依存や買い物依存の問題にしてもそうです。
満たされなくても苦しくても、罪悪感や無力感を感じても
やめることができないのが「依存症」です。

セックスに関することで生活や人間関係が破綻していても、
本人は「依存症ではない」「好きでやっているんだ」と言い張る場合も多いでしょう。
(依存症の特徴の一つは、本人の強い否認です)
しかしその人本人も、性依存症という病の存在をよく理解しておらず
自分自身を誤解している可能性もありますから
本人が否定したからといって「違う」と決め付けることはできません。




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